第三回優しさを考える会、終了しました。

みなさん、こんにちは。
木々の葉はまだ青々としていますが、朝晩は急に秋めいた、東京です。そういえば何時のまにか、陽が出ている時間は、こんなに短くなったんですね…。


24日の土曜日(…もう一週間経ってしまいました)、連休の中日でしたが80名あまりの方々に横浜・関内にお集まりいただいて、無事に会を行うことが出来ました。
初めにご報告したいのは、先だってこのブログでも皆さんにご協力をお願いしました、「ご不要の"老眼鏡"と"ステッキ"を東北に送ろう」ですが、老眼鏡が50個・杖が6本も集まりました!早速、遠野の多田さんのところへ送らせていただきました。ご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました。


 スープ教室の同窓生の集まりであるカイロス会は、現在「味わう会」と「優しさを考える会」をそれぞれ年に1回のペースで行っています。「考える会」は、会のテーマである"優しさ"について考えるために、様々な分野の方をお招きしてお話をうかがうことを中心にしてきました。今回はそれまでとは異なり、スープ教室で行っているようなデモンストレーションと講義を行ない、その後お話…という形式で行いました。これは、辰巳先生の「こういう時だから"もしもの時に持っておくことで役に立つようなもの"を。そして、以前卒業された方々には"教室でお教えしていないもの"をお伝えしたい」というお考えと、今まで何人もの会員の方々がアンケートに書かれていた「もう一度教えていただく機会があれば」という声に沿ったものを、ということで実現した企画でした。



そのような意図でこの日、デモンストレーションをされたのは「ふわふわ玉子」「鰹節のでんぶ」「ぬちぐすい」の三品。その後で、煮干し出汁を簡便に取ることが出来る「潮の宝」の紹介と続きました。どれも、具材を切り揃えたりことなく、できあがるもの。それでいて、見て、口にしてほっとひと心地つくことができるようなもの。手を動かしながら先生が言われていたことの一つは、

自分でやらないと。そうしないと、誰かがやってくれるという癖がついちゃうのよ。ぜひ、ご自分でやって下さい。

手数と時間をかけたものだけを、ご馳走と呼ぶのではないだよなぁ…と実感する三品でした。


個人的には、特にふわふわ玉子に注目していました。実は以前レシピを見ながら作った時に、煎り卵風になってしまったんです。何だか違うよな、と思いつつも目指すべき状態が想像しきれない。材料がシンプルな方が難しいなぁと思い知った思い出の!?一品だったのです。それだけに、出来上がりの状態を確認出来たのは嬉しかった!参加されたみなさんは、どんなところを確認されたりしましたか?


さて、対馬さんとデモンストレーションをされながら、辰巳先生が話されたことをもう一つ。実は最近、教室でも度々口にされていることがありました。それは、「感じること」とそれを(相手に伝わるように)「言葉にすること」、この二つの力が弱っているのではないか…という危機感。

感じたことは、言葉にして下さい。言葉になっていないと、人の役に立たないから。私も、誰かの批判(意見)と、自分の感じたことを比べることをしていたのよ。例えば、なぜ美味しいと思ったのか(不味いのか)を言葉にすることをして下さい。見たこと、聞いたことの"サマリー"を出して下さい。

日本語特有とも言える、主語がない文章を多く使うやり取りに慣れていると、自分の感じたことや意見を曖昧ではない言葉にするのは、意外に大変だということに気付き難いですよね。例えば、雰囲気を表しただけで伝えたつもり、分かったつもりでお互い特に確認しないまま…というのは珍しいことではありませんよね。「どこまで自然とつきあうかで感性は変わってくる」「文化は感触を抜きにしてはあり得ない」という彫刻家の佐藤忠良氏の言葉も引用されながら、触るということ、感じることの大事さ、そして料理は五感を総動員する行為であることへと話はつながっていきました。
また、先頃観にいかれたという坂東玉三郎公演の体験から「もの事の(表面的なことではなく)向こう側をみなければダメ」ということを繰り返し話されました。文章にすると、厳しい口調ばかりのようにみえてしまうかもしれませんが、みなさんご存知のように、その時々で会場から笑い声が聞こえるなかで、あっという間に1時間半が過ぎていました。


休憩を挟んだ後は、伊藤神父のお話。「この会は(ご自身の本来の職務である)宗教活動の場とは違うので、取り上げるかどうか悩んだのですが…」と前置きされながらも、ある会員からのリクエストに応えて、辰巳先生が人生に影響を与えた三冊として選ばれたうちの一冊「小さき聖テレジア自叙伝」と、辰巳先生の考えやスープを重ねて紹介いただきました。草取りをすること一つにも(神への)心を込めたというテレジアと、先生が座右の銘として置かれている「強き稽古 物数を尽くせよ。工夫を極めよ。これらのことども、心底に当てよ。花を知らんと思わば種を知るべし。花は心、種は態(わざ)なるべし。」という風姿花伝の一節。
その他にも辰巳先生の著書からの引用を示されるなどして、辰巳先生のスープは「信頼することと委ねること」「絶え間ない努力」「自然への親しさと謙虚さ」生まれるものではないか…とまとめて下さいました。このことを先生は会の後で「100年以上前の話を、現代とつなげて話されるのはとても難しいのに、よくまとめて下さった」と言われていました。


今回の「考える会」は、様々な事情からご案内から実施までが短く、また連休中ということもあり、ご都合がつかなかった方々もいつも以上にいらっしゃったかもしれません。どうぞお許し下さい。また、参加されたみなさん、ありがとうございました。アンケートを見るのが楽しみです(…ちょっとドキドキしますが)。お帰りになられてから改めて送って下さる予定の方も、アンケートよろしくお願いいたします。



さてさて、気が付けばもう10月です。今年も後三ヶ月。はやいですね〜。自分で言いながらちょっと慌てそうになってしまうのですが、いくつもメモした中から、この言葉を最後に。

何が起こっても、たじろがないようにするには、一日一日やっていくしかありません。何でもない日常の積み重ねがほんとに大事ね。(中略)一生のよい報いがあると思います飽きないでやって下さい。