料理研究家を通してみる、食生活の変遷

「…朝の連続TV小説『ごちそうさん』。杏が演じるヒロインのめ以子には、おそらくモデルになった料理研究家がいる…私が推測するところ、人生の大筋は辰巳浜子、前半生と大阪編の一部は小林カツ代のエピソードから採ったと思われる」


みなさん、こんにちは。このような文章で始まるのは、5月に発売された阿古真理さんの「小林カツ代栗原はるみ」。副題に"料理研究家とその時代"とあるように、昭和から平成という時代の変遷を、どのような料理とそれを紹介した研究家が人気をはくしたかによって読み解こうという内容です。偶然書店で目に留め、一気に読んでしまいました。


 この本では、取り上げている料理研究家の方たちを図のように位置づけ、分類しています。これを眺めると、大きな傾向として”創作派"に分類される研究家が増えていること、なかでもケ(日常)を一層意識した料理の提案が中心であるようにみえます。


一番気になったのは、どうしても辰巳先生に関する部分です。"本格派"で、ハレでもケでもない位置におかれた先生に関しては、"第四章 和食指導の系譜”で24ページに渡って書かれています。ただそれだけでなく、他のページに登場する様々な料理研究家の面々とその方達が注目された(家庭の料理を通じての)時代の色というものがなかなかに面白い。そしてそのような流れがあるからこそ、二代に渡る辰巳先生の立ち位置が浮き上がってくる。それらを見ていると、料理研究家とその提唱する料理をみていくことは、”日本の生活史”研究の有力手段の一つなのではないかと思えてきます。


各地の図書館にも入っていると思いますし、夏の読書にみなさんもぜひどうぞ〜!ちょっとひいて全体を眺める体験を通じて、きっと新しい発見があると思います。


東京は、平年より二日早く梅雨明け。今日も、ぐったりするような暑さです。関西から東海地方も今日梅雨明けが発表されたようですので、いよいよ夏真っ盛りですね。食べ方暮らし方も、”準備する”から、”しのぐ”本番です。どうぞよい夏をお過ごし下さい!

小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)

小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 (新潮新書)