辰巳芳子の展開料理・基礎編(ソニーマガジン社)


みなさん、こんにちは。相変わらずぐずついた空模様の東京です。

先日お知らせした新刊は、やはり書店に並んでいました。ページをめくると、なんといいますか、圧倒されるような"力"を感じます。半年ほど前に出版された「娘に伝えるわたしの味」が、辰巳先生の原点・背景であるとすれば、この本はそれを異質な"洋"で洗い、再度構成し体系化したものの集大成であるようにみえました。

自分は「知っている」「時が来たらやってみせる」と、暮らしをなめている方が多い。しかし、手足に属することは、単なる知識に属することとは異なる。音楽に置き換えれば当然です。
曲をよく知っている、楽譜も読める、それゆえ楽器にむかえば奏せると思う人はありますか。歌ひとつおもうようにならぬことは、先刻ごぞんじのとおりです。(P.4より)


厳しいことを…と取る方もいらっしゃるかもしれませんが、自分には、悲痛な叫びであり、願いであるように、響きました。行動にはまず意思ありき、という場合もありますが、何となく気が乗らないという時も多い。こんな時には、まず身体を動かしてみるのが有効なのは(意識されているかどうかは別として)、多くの方が体感されていることだと思います。会社での仕事も、実はそういうことが多いように思います。


お恥ずかしいことに、実は自分も、教室に通いはじめてしばらくは「時が来たらやって見せる」派でした。たまに台所に立ってみても、時間はかかる、味は違う…でも、知っているのだからそのうちに…と根拠のない思い込みだけはある状態(。。。こう書いていて、ほんとに恥ずかしいです)。実際にスープを作り、味のチェックを指定いただくようになってから、いろいろと自分の中の歯車が動き始めた気がしています。そんな自分から見ると、教室後にスープを持参される方が最近多いことは、ちょっと眩しいです。


載っているメニューは、スープ教室では取り上げられていないものも多いように思います(スープ以外も多い、ということですね)。目次は、大きく四つに分かれています。「ソース」「出汁・調味料」「豆・穀類」「乾物」です。これらが体系の筋道であり、食事の骨格となり、その時その時の食材との組み合わせや展開で血肉となり、身体ができてゆく。いまはそんなことが、連想されます。


ちょっと時期とは合わない気もしますけれど、ペシャメルソースを奏せることを目指そうと思います。じめじめした天気に、雷公ならぬ、一筋の陽光を得ることができるような一冊に思えました。みなさんのご感想も、ぜひ聞かせて下さいね。



(追記)裏表紙に、こんなことが書かれていました。"応用編、8月末発売"。。。


辰巳芳子の展開料理 基礎編

辰巳芳子の展開料理 基礎編