講演会:さんぶ野菜ネットワーク代表・富谷亜喜博さん

みなさん、こんにちは。
ここ数日、晴れ間がみえる東京です。次の日曜日(30日)は、カイロス会の「考える会」です。参加してくださる皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。



さて、時間が経ってしまいましたが、先月26日、さんぶ野菜ネットワークの代表・富谷さんの講演会がありました。「天のしずく」をご覧になった方は、畑で人参を持ってニッコリ微笑んでいる男性を覚えていらっしゃいますよね。実は、教室だけでなく、毎月我が家で頼りにしている野菜を作ってくださっている方達のことを、知っているようで知らないことが気になっていました。結論から言えば、聞きに行ってよかった!欠けているピースが埋まったような嬉しさはもちろん、頼りにする側が考えなくてはいけないことに気付かせてもらったことなど、いくつかご紹介しようと思います。


有機農法に取り組み始めたきっかけ
富谷さんたちが有機無農薬栽培を始めたのは、1988年。有志29名で実験的に開始したのだそうです。なぜ有機栽培を手掛けるようになったのか。そのきっかけは、野菜が変形してしまったりする連作障害や、農薬による自分たちの健康問題だったのだそうです。当時20代の若者たちがそれまでと違うやり方にトライしたわけですね。そして、そんなことはやめろと言わずに認めた周囲のベテランたち。
その活動が根付き、広がり、2005年にはさんぶ野菜ネットワークという農事組合法人という形になりました。そして現在、生産者は54名、研修生10名。25年かけて、着実に仲間を増やしてきたんですね。







■五つの約束
有機無農薬栽培を始めるに当たって、これを守ろう!と有志が決めた理念が紹介されました。

1)土壌消毒剤、除草剤を使わない
2)化学肥料を使わず、堆肥・緑肥作物による土作りを重視する
3)特定の品目に偏らない作付けをし、輪作体系を重視する
4)取り組む農地を明確に特定し、登録する
5)「いのち」に直結した食べ物を供給することを常に意識し、消費者と顔のみえる関係づくりを目指す
以上五つの基本合意事項を元に野菜の生産活動を行う

農薬と化学肥料に頼らない農業を実現するために、何をするかはモチロン、何をしないかを決め、目指す姿も描いている。当たり前のことをきちんと言葉にして、メンバーで共有するというのは、意外と飛ばしてしまいがちに思います(特に、よく知ったもの同士が集まった場合)。でも、それをしてきたからメンバーが途中で増えてもブレにくいし、25年経っても伝えていける。


農薬というと、植物に散布されるものをイメージしてしまうんですが、実際には土に多く使われるのだそうです。それだけ、土には多様なものが住んでいる訳ですね。でも土の中の悪いものを殺そうとしても、それだけを選別することはできないので、有用なものも死滅してしまう。そうすると、以前は土(の中の微生物や菌などが)してくれていたことがされなくなってしまう。。。そこで、更に土に対して薬や肥料を加えたり、植物に直接散布する農薬が必要になる…となっていくのだそうです。
いったんバランスが崩れると、それを戻そうと薬剤が使われ、そのサイクルがどんどん進んでいくんですね。理念のトップに土作りに関するものがあげられているのは、そんなことがあるからなのです。


■知ること、考えること
江戸川の鰻神奈川県の椎茸に最近になって出荷自粛要請が出ました。3.11以降、好むと好まざるとに関わらず、放射性物質南関東でも身近なものになってしまいました。さんぶ野菜ネットワークでも、測定と結果の公表を継続しています。しかし、販売量の落ち込みは回復していないのだそうです。
正直に言えば…自分自身も悩みました。あの日以降、「本当のことは後からわかる」ということを何度も経験しましたからね。最近では、TVや新聞などで食品のことが取り上げられることはずいぶん減ってしまいましたが、厚生労働省のサイト地方自治体のサイトには今でも検査結果が載りますし、民間の検査所での結果などからも今の状況を知ることができるのが現実です。そんな中で、すべてを排除することはできないとしたら、どう暮らすかということしかない。そこで、例えばこんなことを考えました。
・なるべく検査を(継続)している生産者を選ぶ
・○○県産というような大雑把な区分では判断しない(できない)


いつもできているとは、もちろん思っていませんが、以前とは違う考えや行動が必要になったとしたら意識し続けて当たり前にしていければと思います。
また、このことは同時に、生産者と消費者の関係改めて考え直す機会なのかもしれない、とも思います。生産者にも様々な事情があるはずなので、したいと思っていることがすぐにできるかどうかには、時間的なズレも生じるでしょう。そんな中で気を配ってくれている生産者を応援することは、来年、あるいは再来年から実行に移そうと計画している生産者の方へのメッセージにもにつながると思います。


さんぶ野菜ネットワークには、この時期に短い旬を迎えるものがあります。楕円形の少し小型のマダーボールというスイカです。皮が薄く、甘みがしっかりしていて、しゃくしゃく。味が薄くてぐずっとしたスイカが増えて手が伸びなくなってしまっていたのですが、これは違いました。もし、興味のある方は、どうぞ下記までお問い合わせください(毎月の野菜セットのことも問い合わせ先は同じです)。


さんぶ野菜ネットワーク 野菜セット事務局
電話:0475-89-0590、FAX:0475-89-3055