3つの前書き

みなさん、お寒うございます。
冬至も過ぎ、残すところあと一週間で新しい年。年々月日の経つのが早くなるといいますが、個人的には早いのかどうかよくわからなくなってきました。時間のすぎる早さに慣れてしまったのかもしれません(それはそれで怖いです)。


さて、先日の鎌倉教室で辰巳先生がお話しされていた、新刊「仕込みもの」について。

「仕込みもの」には3つの前書きがあります。どれもしっかり読んで欲しい。

27年前に出版された本をベースに加筆されたこの本は、そのような出自もあって、前書きが3つもあるのです。元々の前書き、新しい前書き、そして表紙にモンドリアンの「ブロードウェイ・ビギウギ」を使うことに込められた辰巳先生の思いです。

仕込みもの

仕込みもの

今までにも先生の著書を読まれている方は、気付かれているのではと思いますが、前書きは分量は少なめですが内容がかなり濃いものになっていることが多いです。”濃い”と感じる理由が、今回の前書きを読んで少しわかったように思います。料理に向かう際の心持ちや姿勢が、抽象化されているからではないか、というのがその仮説です。


辞書には、抽象について、こんな説明が載っています。

事物や表象を,ある性質共通性本質に着目し,それを抽(ひ)き出して把握すること。

30年近く前の前書きからも感じますし、今回の前書きからはさらに研ぎすまされた抽象化を見ることができるように思います。

手を動かし、料理を作ってみると、そこに不可視な言葉が浮かび上がってくる。

4つ目の前書きともいえる若松英輔さんの巻頭に寄せられた言葉からも、そのことがうかがえるように思います。前書きに込められた辰巳先生のメッセージ、どうぞ暖かくして、ご覧下さい。